腸内細菌を活用した「精密崩壊カプセル」の共同研究がJST「A-STEP」に採択
― 大腸に届いた特定の腸内細菌だけが分解する新素材カプセルで、個人差に左右されない腸内環境の精密制御を目指す ― 2026.10.02お知らせ PDFファイルをダウンロード
● 研究期間は2026年10月から2031年3月までの4.5年間、研究開発費(JST支出分)は総額約1.1億円です。
■ 研究の背景 ― 「腸内環境を調べても、変える手段がない」という課題
腸内細菌は、肥満や糖尿病などの生活習慣病から免疫、メンタルヘルスまで幅広く関わることから、「もう一つの臓器」とも呼ばれています。近年は腸内細菌検査サービスが普及し、自分の腸内環境を手軽に知ることができるようになりました。しかし、「では具体的に何を摂れば腸内細菌を望ましい状態に変えられるのか」という、診断の先にある確実な介入手段はこれまで十分に確立されていませんでした。
既存の大腸腸溶性カプセルの多くは、胃酸への耐性やpH・時間経過など大まかな条件で崩壊するように設計されていますが、大腸に本当に届いてから崩壊するかどうかは、服用する人ごとの腸内細菌の違いによってばらつきが生じやすいという課題がありました。
■ 研究の概要 ― 狙った腸内細菌にしか分解されないカプセル
本研究では、ヒトの消化酵素では分解されず、大腸に生息する特定の腸内細菌が持つ酵素によってのみ分解される新素材を用いた「精密崩壊カプセル」を開発します。外側と内側の二重構造を採用することで、胃や小腸では中身が守られたまま大腸まで届き、狙った腸内細菌が存在する環境で初めてカプセルが崩壊し、有効成分が放出される仕組みです。
これにより、これまで「届くか届かないか」というレベルにとどまっていた大腸送達技術を、狙った腸内細菌の増減を精密にコントロールできる“道具”へと発展させます。研究期間中には、模擬消化液から実際のヒト糞便を用いた培養液までをつなげた評価系を構築し、送達性・崩壊性・分解速度・個人差の4点を定量的に検証したうえで、二重カプセルの量産技術の完成と、臨床試験による効果の確認を目指します。
・近畿大学(栗原研究室):腸内細菌の網羅培養技術・評価系の構築を担当
・三生医薬:カプセル素材の開発、製剤設計、量産技術の確立を担当
■ 今後の展開 ― 社会実装により実現を目指す未来像
本技術が実用化されれば、腸内細菌叢検査サービスと組み合わせることで、「検査で分かる → カプセルで介入する → 変化を実感する」という一連の価値提供が可能になります。将来的には、生活習慣病や炎症性腸疾患などのリスク低減を目的とした健康食品・サプリメントへの展開に加え、量産技術の確立を通じて、一般加工食品からサプリメントまで幅広い製品形態への応用も見込んでいます。腸内細菌叢関連市場は今後も拡大が見込まれており(2022年:約1,500億円 → 2035年:約1.1兆円と予測)、本技術はその中核を担う“介入技術”としての基盤技術となることを目指します。
■ 関係者コメント
近畿大学 生物理工学部 准教授 栗原 新 氏(共同研究者)
「これまで培ってきた腸内細菌の網羅培養技術を活かし、大腸内で“狙った腸内細菌にだけ効く”カプセルという新しい介入手段を形にできることを大変嬉しく思います。三生医薬様の製剤化・量産技術と組み合わせることで、研究成果を確実に社会実装につなげ、腸内環境を通じた健康寿命の延伸に貢献していきたいと考えています。」
三生医薬株式会社 代表取締役社長 山田 和永
「近畿大学・栗原准教授との共同研究は、当社が長年培ってきたカプセル製造技術を次の成長へとつなげる挑戦です。腸内環境の違いに左右されにくく、狙った場所へ成分を届ける新たな製剤技術の確立を目指し、人々の健康維持や予防領域に新たな価値を創造し提供できる事業へと育ててまいります。」
■ 本リリースに関するお問い合わせ先
三生医薬株式会社 広報・アウトリーチ担当 藤作(ふじさく)
Email: info@sunsho.co.jp